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(09.10.09)「新内閣への要望」提出

 全国保育団体連絡会は10月6日、保育問題に関する新内閣への要望「待機児童のための保育所増設こそ急務です―官僚主導の保育制度「改革」は即時中止を」をまとめ、関係機関に提出しました。



2009年10月6日
新内閣への要望
待機児童解消のための保育所増設こそ急務です
−官僚主導の保育制度「改革」は即時中止を−


全国保育団体連絡会


 9月7日、厚生労働省が公表した2009年4月1日の待機児童数は2年連続増加の2万5,384人である。厚労省は待機児童増加の要因を共働きの希望に施設整備が追いつかないためと説明しているが、保育所は1年間でわずか16か所しか増えておらず、積極的に施設整備をすすめたとはいえない。既存施設へのつめこみによる定員超過入所も限界といえる。

 この間厚労省は、保育の量的拡大のためには現行保育制度の見直しが必要であるとして、社会保障審議会少子化対策特別部会において議論をすすめ、政権交代後も官僚主導の保育制度「改革」論議を続けている。厚労省の提案する「新保育制度」は障害者自立支援制度などをモデルにしているが、これは政治主導を掲げ、障害者自立支援制度の見直しを明言した新政権の方針とも矛盾するものである。

 いま、保育所を必要としている子どもと保護者が求めているのは、導入されれば混乱が必至の「新保育制度」ではなく、国民本位の子育て支援、経済の活性化にもつながる保育所の緊急整備である。保育制度「改革」の検討作業は中止し、国による保育所整備計画の策定と緊急の財政措置など、待機児童解消のための緊急保育対策の実施を強く要望する。



待機児童の急増は保育所整備を怠った政治の無策が原因

 9月7日、厚生労働省は、2009年4月1日の待機児童数を公表しました。厚生労働省の定義は一部認可外保育施設の利用者を待機児童にカウントしないなど非常に不充分なものですが、それでもその数は2年連続して増加し、2万5,384人(昨年同時期より5,834人、約30%増)となっています。厚生労働省は「不況で失業したり、収入の減少などによって共働きを希望する人が増えたが施設整備が追いつかない状況」であると説明しています。

 たしかに、昨年の経済危機が長引く不況に追い打ちをかけたことは事実ですが、保育所の入所希望は近年急増したわけではなく、1990年代以降一貫して増え続けています。しかし保育所の施設数は前年からわずかに16か所しか増えておらず、厚生労働省が積極的に保育所整備をすすめてきたとは到底いえません。

 こうした状況のもと、自公政権は「待機児童ゼロ作戦」などを打ち出しましたが、認可保育所増設など保育所整備を基本にせず、中心施策は定員超過入所などの規制緩和策ばかりでした。この10年間に保育所入所児童は20%も増えているにも関わらず、認可保育所はわずか2.5%しか増えていません。その結果、保育所はつめこみ保育を余儀なくされました。待機児童の急増は保育に必要な予算をかけてこなかった政治の無策の結果なのです。これは保育所関係予算が一般会計予算のわずか0.38%(2008年)にすぎず、就学前教育費の対GDP比は0.21%で、OECD加盟25か国中22位(2005年)という事実などからも明らかです。加えて自公政権は公立保育所の廃止・民営化の推進など、公的保育の切り捨てをすすめてきたのです。

官僚主導の保育制度「改革」方針は早急に見直しを

 にもかかわらず厚生労働省は、保育所入所を求める国民の願いを言葉巧みにすりかえ、待機児童解消がすすまないのは現行制度に問題があり、保育の量的拡大のためには保育制度「改革」が必要だと、厚労官僚主導の社会保障審議会少子化対策特別部会で制度「改革」論議をすすめ、今年2月に直接契約、直接補助、応益負担を原則とする「新保育制度」案を提案しました。「新保育制度」は構造改革を推進した自公政権の遺物であり、施行後すぐに見直しが繰り返されている介護保険や、障害者自立支援制度をモデルにしていることも問題です。

 厚生労働省は、政権交代後も保育制度「改革」方針を見直さず、保育制度の詳細設計論議をさらにテンポを早めてすすめようとしています。これは政治主導を掲げ、障害者自立支援制度の廃止を明言した新政権の方針とは全く異なるものです。選挙によって保育・子育て支援施策の充実を求める国民の声が明らかにされた今、既定方針のまま保育制度「改革」を継続することがあってはなりません。

新保育制度では保育水準の後退は必至

 厚生労働省は制度「改革」によって保育の量的拡大を図ることができると説明していますが、企業参入頼みの新保育制度では量的拡大の保障がないばかりか、これまで積み重ねてきた日本の保育の水準が大きく後退する危険性があります。新保育制度では、多様な給付メニュー(受け皿)での対応を制度化するとして、劣悪な条件の保育サービスも認可保育所と同列に扱おうとしています。また、新保育制度では市町村の役割が保育の上限量の認定と費用の支払義務に限定されるため、市町村には積極的に認可保育所整備をする責任がなくります。さらに、利用時間に応じた応益負担が持ち込まれるうえに、認定時間を超えた利用や、休日・夜間保育などは全額自己負担が想定されています。新保育制度が導入されれば、保護者は保育所利用を抑制せざるを得ず、子どもは細切れの保育しか受けられなくなってしまうでしょう。

 市町村の施設整備責任がなくなり、認可外保育施設や企業頼みの受け皿づくりがされると、都市部では劣悪な施設が増える一方で、地方では多様な事業者の参入が期待できず、都市でも地方でも、介護保険のように、保育所を利用したくてもできない保育難民が大量に生まれるでしょう。また、多様な事業者の参入促進を目的にした事業者指定制度は、補助金の使途制限がなくなるために補助金(保育報酬)が増えても保育の質の向上や、職員の処遇改善につながらないなどが危惧されています。このことは介護保険や障害者自立支援制度の現場でも大きな問題となっています。そうした制度をなぜ、あえて保育に持ち込まなければならないのでしょう。

待機児童解消のために現行保育制度のもとで緊急保育対策の実施を

 いま、保育所入所を切実に求める保護者と子どもにとって必要なのは、導入されれば混乱が必至の新保育制度ではありません。保育を必要とするすべての子どもが必要な保育、子育て支援サービスを受けられるための仕組みは、国と自治体の責任を明確にした現行保育制度の拡充を基本に検討されるべきです。国の責任で待機児童解消のための保育所整備計画を策定し、自治体が保育の実施責任を果たせるよう財政措置や施策面での支援が急務です。保育所をつくることは、単なる箱物行政ではありません。地域の子育て支援拠点のきめ細かな整備にとどまらず、地域密着の公共事業や新たな雇用の創出、税収確保など地域経済の活性化に貢献するものなのです。

 子どものための施策は最優先の課題です。新政権には「子ども手当」の実現など子育て支援の拡充策として保育制度「改革」の検討作業は即時中止し、補正予算の組み替えや来年度予算の抜本的見直しによる緊急保育所整備計画の策定と緊急保育対策の実施を強く求めるものです。


全国保育団体連絡会
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