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【16.03.11】子ども・子育て支援法一部改正による企業主導型保育事業創設について
市町村が関与しない保育事業(企業主導型保育事業)は問題です 子ども・子育て支援法一部改正による企業主導型保育事業創設について(談話)
2016年3月9日 全国保育団体連絡会 事務局長 実方伸子 |
国は、今国会に「子ども・子育て支援法」に新たに「仕事・子育て両立支援事業」を追加する改正法案を提出しています。あわせて2016年度予算案では、この事業の主要な事業として事業所内保育所を拡大する「企業主導型保育事業」の創設を提案しています。 国の資料によると、この「企業主導型保育事業」は「夜間等時間帯のずれた働き方」「短時間等の非正規社員の利用」などに対応し、「複数企業での設置が可能」で、具体例として、小売り、飲食業、24時間稼働工場、工業団地、複合商業施設等への設置が想定されています。子ども・子育て支援新制度(以下、新制度)における他の事業のように児童福祉法等への位置付けはされておらず、責任の所在や、施設の基準等も明らかにされていません。にもかかわらず、2016年度予算では、この運営、施設整備に800億円もの予算が計上され、2017年度までに、待機児童解消加速化プランの目標である50万人の受け皿のうち、最大5万人の受け皿として整備をするというのです。 「企業主導型保育事業」は、その位置付けも内容も不透明であり、以下のような問題が多くあります。予算関連法案だからと拙速な法改正をするのではなく、充分な検討、審議が必要です。
まず、「企業主導型保育事業」には市町村は関与しないということです。新制度は市町村が実施主体であり、施設・事業の認可・確認、給付の支給、認可保育所における保育の実施等に責任を負っています。「企業主導型保育事業」は国が行うとされていますが、国が各地の事業所内保育それぞれについて、指導・監督を含めた責任を負うことができるのでしょうか。新制度の実施主体である市町村の責任をあいまいにすることは、新制度の理念にも沿いません。 また、この間の政策動向を見れば、「柔軟な」とは、規制の緩和や基準の切り下げの容認を意味し、保育の質の低下が心配されます。特に「夜間」や「短時間」などの特殊な保育への対応には、「柔軟」ではない、明確かつ子どもの安全を担保できる基準が必要です。そして、認可外施設である企業主導型保育は災害共済給付制度の対象にはならないため、事故などの際の対応も不明であり、市町村の責任も含めて保育に格差が持ち込まれます。これでは保護者は安心して預けることができません。 待機児童の解消のために、事業所内保育所が果たす役割を否定するものではありません。しかし、仕事と子育てを両立したいと願う多くの保護者は、できれば家の近くで、就学前まで安心して預けられる保育所で保育を受けたいと考えており、地域の保育施設が整備されることを強く望んでいます。
私たちは、このような問題がある「企業主導型保育事業」の性急な実施を認めることはできません。国においては、いたずらに新事業を創設するのではなく、既存の制度を最大限活用し、すべての施設・事業において市町村の責任による保育施策の拡充がされるよう、新制度の改善・拡充、財源の確保をすすめることを切に要望します。
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