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【09.10.14】保育所最低基準の緩和、地方条例化方針に対する「緊急要請」
2009年10月13日
緊急要請 乳幼児の成長・発達を脅かす最低基準廃止・見直し方針は撤回を
全国保育団体連絡会 〒166-0001東京都杉並区阿佐谷北3-36-20 TEL03-3339-3901 FAX03-3310-2535
私たち全国保育団体連絡会は、すべての子どもに豊かな保育が保障されることを願って保育施策の拡充、予算の大幅増額を求める活動にとりくんでおります。10月2〜3日には電話相談「入りたいのに入れない 保育所ホットラインU」を行い、全国から187件(各都道府県組織での受付分も含めると300件以上)の相談が寄せられました。今後これをまとめ、国民の切実かつ具体的な要求をふまえた保育施策の実施を政府に求めるところです。 ところが、10月11日、政府が地方分権改革推進委員会第3次勧告を受け、認可保育所の設置基準(児童福祉施設最低基準)などの規制を緩和する方針を固めたとの報道に接し、国民の願いとは相反した施策の強行に大きな危惧を抱いています。私たちはこの最低基準廃止・見直し方針の撤回を求め、以下について要請するものです。
1.1948年に制定された児童福祉施設最低基準は、戦後当時の状況をふまえたギリギリの基準であったため、厚生大臣にはその向上が課せられています(第3条)。にもかかわらず、施設設備の基準は制定以後、一度も改善されていません。国の責務を果たさずにおきながら、これをさらに規制緩和するなどは言語同断です。子どもに対する国の責任放棄と言わざるをえません。 現在、2歳以上児の保育室の面積は1人当たり1.98uですが、ここにはロッカーや机、イスの配置や、保育士の存在は含まれていません。たとえば、現行基準で2歳児6人と保育士1人に保障されるスペースは11.88u(約7畳)にすぎません。ここに必要な生活用具や玩具を配置し、食べる、寝る、遊ぶのすべての生活を営むことを求めているのが日本の最低基準なのです。 諸外国と比較しても劣悪な水準にある最低基準を緩和し、地方まかせにすることは、子どもの成長・発達の権利を脅かし、保育の質の低下を余儀なくするものです。待機児童解消のために規制緩和をすすめることは、子どもたちを今以上に狭い保育室に押し込め、少ない保育者で保育することを推奨することになり、絶対に認められません。
2.また、施設基準の規制緩和で子どもの詰め込みを可能にしたとしても、保護者はそうした劣悪な施設に子どもを預けることを望んではいません。先に紹介した電話相談「保育所ホットラインU」では、保育所入所希望者の多くが、入所の主要な条件に保育の質を上げており、質の担保された認可保育所への入所を希望していることが明らかになっています。我が子の健全な成長・発達を願う保護者が、良質の保育を求めるのは当然のことです。 規制緩和は待機児童の解消につながらないばかりか、これまで保育現場の努力で積み重ねてきた日本の保育水準を大きく引き下げ、保育の質を低下させる役割を果たしかねません。
3.待機児童急増の原因は最低基準や保育制度に原因があるのではなく、この間、「待機児童ゼロ作戦」を打ち出しながら、保育予算の増額や認可保育所の整備に力を入れず、もっぱら定員超過入所など規制緩和ばかりをすすめてきた前政権の無策にあります。保育関係者の反対を圧して進められた規制緩和路線を新政権が引き継ぐことは、保育関係者だけでなく、国民の期待に反するものです。 また、最低基準の制定は児童福祉法45条に定められた厚生労働大臣の権限であり、これを地方自治体に委任するには省令の変更にとどまらず法律改正が必要なはずです。性急な変更は混乱の要因です。
子どもは未来の希望であり、保育、教育の質の確保は国の責任です。いま必要なことは、子どもに負担を押しつける、その場しのぎの待機児童対策ではありません。新政権の政策合意のとおり、市町村が質の高い保育を確保するために、認可保育所増設が行えるよう、国の責任で保育予算を大幅に増額、保育施策の拡充を求めるものです。
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